「つま先伸ばして〜」
「甲を見せて〜」
「甲を出して〜」
などなど、レッスン中に聞いたことがある方いますか?
SNS上でも人気のトピックなのでしょう。よく見かけます。「甲だし」とかね。
どの言葉も同じ意図でレッスン中に使われている言葉だと思うのですが、
それぞれニュアンスが違うと思いませんか?
このようなキューイングワードは、決してワガノワメソッドで指導をする先生だけが使う言葉ではないですが、
オーディションにパスした人じゃないとできないよね」って言われがちなロシア派のメソッドとして、
果たしてメソッドの教授法に「このようなワードを使って指導をするべし」という決まりがあるのか?という点について掘り下げてみたいと思います。
簡単に答えると、
「甲を出す」という言葉は使われません!
ワガノワメソッドの教授法の本の中にも「甲を出す」という言葉は記載されていないんです。(そういう日本語にはならない)
「つま先を伸ばす」はレッスン中にも良く聞くし、ワガノワの著書の中にも記載があります。
ただし、「つま先を伸ばすと言われるときには常に足の甲も伸ばされていると理解すべき」という補足がついています。
つまり、
どちらか一方だけが伸びるのではなく「つま先と足の甲はセットで伸ばす」となります。
「足の甲を見せて〜」これもレッスン中のキューイングとして聞くことはよくありましたが、
何かしらのポーズをしたときに、つま先を強調するような場合に言われることが多く、タンジュでこのワードを使うことはあまりないかな。
なぜなら、タンジュは足の甲を見せるためにやる動きではないからです。
バレエには、つま先も足の甲も伸ばす動きはたくさんあります。
しかし、それは甲を出したから解決するものではありません。
ワガノワの著書に興味深い記述があります。
ポワントワークに最も都合の良いのは、先が揃った指で、甲が低く頑丈で強い足首の脚である。
だそうです。
「頑丈で強い足」が必要なんですよ!!
ポアントワークで必要な強い足、
ジャンプでも必要ですよね、着地のたびにケガしてちゃ踊れないし。
足の甲を出しても強い足にはなりません。
むしろ、足の甲と呼ばれる部分にあるたくさんの関節を繋いでいる靭帯を無理やり伸ばすことで、靭帯でのサポートは弱くなり、筋力という支えがなければ足は「弱く」なる一方です。
ワガノワの著書の中の続きの文章で、
我々は、高い甲で足首がキュッと細く、足の指がまとまっている足を美しい脚と考えるが、このような足はポアントでの動き、特にポアントでのジャンプは困難である。
という記述もあります。
なぜ、足の甲が高い、足首がキュッとしているものが美しいと捉えられているのかについては今回は置いておきますが、
たとえ、「甲が高い足を美しい」と考えるクラシックバレエという前提であったとしても、同時に「強い足」も欠かせないものであることを忘れてはいけません。
まとめると・・
- ワガノワメソッドの教授法の中には、「甲を出す」という説明はない。
- 「甲を伸ばす、つま先を伸ばす」ことはバレエの動作には必要だが、教授法の中ではバレエの動きを正しく積み重ねていく中で、足の強さや、伸ばすことの出来る足の甲やつま先を鍛えていくとという、あくまでも「バレエの動作」での気をつけることや方法が説明されている。
- 甲を伸ばすためのエクササイズ・トレーニングはワガノワメソッドの教授法の中ではカバーしていない。
バレエのレッスンでは、バレエに必要な足の強さを育てることも目的の一つです。
だからこそ、レッスンそのものが、正しくFootを使い、強さを育てるトレーニングの役割を果たさなくてはいけない。
そんな段階的に鍛えていけるレッスンの継続により結果的に足の甲が出ているような形になることはあるでしょう。
形や言葉の表面的な意味に惑わされず、使える足を育てるためには、自分にも、生徒にも必要なことが何かを見極められる目も育てないとですね。